大人が知らない高校生のTwitter事情【連載】大人が知らない子供達のネット事情 Vol.1 鈴木朋子/ITジャーナリスト
親世代より高いスマートフォン普及率
iPhoneが日本で発売されたのが2008年7月。それから10年が経った今では、街中にスマートフォンを手にしている人があふれていることが当たり前になりました。高価なデバイスにも関わらず、もはや十代からシニアまでスマートフォンでインターネットを利用しています。
デロイトトーマツコンサルティングが2017年10月発表した「デジタルメディア利用実態調査」によると、スマートフォン保有率は14~19才で84%となっています。中学生が含まれているため、高校生ではもっと高い保有率になるでしょう。一方、親世代である34才~50才は70%と低いのは、ガラケーと呼ばれる携帯端末の愛好者が多いからなのかもしれません。
高校生、特に女子高生がスマートフォンで楽しんでいることといえば、インターネットを通じたコミュニケーションです。そう、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)ですね。幼い頃からインターネットが身近にある彼女たちは、親世代の大人とは異なった感覚を持っています。この連載では、そんな彼女たちのSNS事情をお伝えします。
TwitterはLINEに次ぐ人気SNS
SNSといえば、どのサービスを思い浮かべますか?いま、国内では、LINE、Twitter、Instagram、Facebookが4大SNSと扱われることが多いですね。皆さんもいずれかのアカウントは持っているのではないでしょうか。
女子高生が使っているSNSについての調査を見てみましょう。株式会社テスティーが2018年2月に発表した「現役JKのぞき見企画【Vol.7】Twitterに関する調査」によると、「利用しているSNS」の第1位は「LINE」で87.1%、第2位は「Twitter」で67.5%、第3位は「Instagram」で53.0%とのこと。
LINEは世代を超えた連絡ツールになっています。友人とのコミュニケーションだけでなく、家族でグループを作ってやりとりしているご家庭も多いと思います。また、「2017ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞に輝いた「インスタ映え」の元となったInstagramは、一年ほど前から急に使われ始めた印象で、これから注目のSNSです。
そして、意外に感じた人が多いかもしれません。第2位のTwitterは高校生にとって必須のSNSとしてLINEと並ぶ人気サービスなのです。大人にとってのTwitterは、ニュースや速報などの情報を収集する目的で使うSNSですが、高校生たちは仲間内でコミュニケーションを取るために利用しています。
顔出しは当たり前、高校名や学年、クラスもプロフィールに入れる人がほとんどで、女子の一部が非公開にしている程度で基本的には情報をすべて公開しています。実際の知り合いとフォローし合うことが基本なのですが、友人の友人、同じ学校の先輩・後輩などとも繋がります。
高校の合格発表のシーズンは、「#春から○○高校」と投稿する中学3年生が目立ちます。これは、進学先が決まった中学3年生が、同じ高校に通う同級生や先輩と繋がるために使うハッシュタグです。入学前にTwitterで知り合いになり、入学式で「Twitterの○○だよ」と自己紹介すればスムーズに友達になれますね。クラス発表が行われたら、クラス名をTwitterのプロフィールに入れ、クラスごとに作られるLINEグループへと交流が移ります。
Twitterアカウントの例。女子は非公開にしている人も多い
複数アカウントは相手への思いやりから生まれている
高校生はTwitterで複数のアカウントを作り、目的別に使い分けています。知り合いと繋がるアカウントは「本アカ(本アカウント)」や「リア垢(リアルな人と繋がるアカウント)」と呼ばれています。
「本アカ」以外に、「裏アカ」、「趣味アカ」など、高校生は平均3つのアカウントを持っています。「裏アカ」は本当に仲が良い友達とだけ繋がるアカウントで、ありのままの思いをつぶやきます。「本アカ」では「今日は友達とディズニー!楽しかった!」と写真入りでツイートし、「裏アカ」では「ディズニー行ったからマジで金ないわ」と投稿するわけです。
「趣味アカ」は、好きなアーティストや声優、ゲームなど、そのジャンルを好きな人同士で繋がるためのアカウントです。実際の知り合いと繋がっているアカウントで趣味の話をツイートしたら「ウザい」と思われるかもしれません。そこで趣味アカを作れば、好きなモノに関する最新事情を手に入れたい、熱い想いを分かち合いたいといった気持ちを思う存分発散できるわけです。
複数アカウントを使い分けるなんて手間がかかって大変ーーと大人は思うでしょう。でも、投稿相手に不快に思われない、デジタルネイティブならではの処世術なのです。
危うい人と繋がる可能性も高いTwitter
2017年10月、神奈川県座間市で9人の遺体が発見される痛ましい事件が起きました。犯人はTwitterで「死にたい」とつぶやいている人を狙ってメッセージを送っていたそうです。警察庁が2017年10月に公開した「平成29年上半期におけるコミュニティサイト等に起因する事犯の現状と対策(https://www.npa.go.jp/cyber/statics/h29/H29_siryou.pdf)」によると、「被害児童数が多いサイト」のトップはTwitterで、全被害児童の1/3強を占めるとのこと。平成28年下期から平成29年上期の間に22.9%も増加していることから、今後もTwitterでの被害児童は増え続ける可能性が高いと思われます。
匿名で気軽に複数のアカウントを作れるTwitterは楽しいサービスですが、その一方で素性のわからない人とも簡単に繋がりやすい側面もあります。お子さんがTwitterを始めるときは、親と相互にフォローするなどして使い方を指南してあげると安心です。まもなく複数アカウントを作って親の目から隠れたところに行ってしまうかもしれませんが、普段からなんとなくTwitterの話題をするなどして、オープンなムードにしておくことがオススメです。