「小学校プログラミング教育の必修化」も怖くない! 『プログラミング的思考』を親子で『安全・あんしん』に楽しもう

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2020年度より、新小学校学習指導要領において「小学校プログラミング教育の必修化」が実施されます。既に多くの親御さんたちはこのお話に戦々恐々としているか、きっと先生たちが我が子にIT的なスキルをきっちり付けてくれるはずと思っているでしょう。知り合いの先生たちもこれに関しては手探り状態と話しており、当初はやっぱり試行錯誤が行われるものと想像します。

個人的には、学校に過度な期待をするよりも、まずは「親」がプログラミング教育を楽しんでみることが重要だと思っています。その上で、子どもたちとプログラミング的な会話をすることこそ、本当の理解への早道といえるはずです。そしてそのプログラミング的思考は、プログラミング以外の分野でも役に立つはずです。

そこで今回は、親である皆さんが中心となりプログラミング的なものを学び、親から子どもたちへ「これ、楽しいよ!」と自信を持って勧められるような無料のツールや教材を紹介するとともに、"安全・安心"に楽しむためのご家族の心構えやちょっとした準備を解説しましょう。

Webブラウザでやってみよう!

まず紹介したいのは、Google Doodleと呼ばれる企画に登場した、大変素晴らしい"ゲーム"です。

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図:「子供向けコーディング50周年」のGoogle Doodle。下にあるパネルを組み合わせ、ウサギにニンジンを食べさせてあげよう

子供向けコーディング 50 周年

これは、2017年12月4日の「子供向けコーディング50周年」の日に、グーグル検索のテキストフォーム上に表示されていた、ちょっとした「ゲーム」のアーカイブです。グーグルとMIT Scratchチームが共同で作り上げたもので、上手にパネルを配置して全部のニンジンを食べるというもの。実はこれ、子供向けに作られた「Scratch」(Scratch - Imagine, Program, Share )というプログラミング言語をベースにしており、最初のステージでは誰もが簡単にクリアできるかもしれませんが、しばらくすると大人でもムムッと悩むようなものになります。むしろ、この内容は子どもたちのほうがすんなりとクリアできるかもしれません。プログラミング的な繰り返しを利用し、"最小の手順で"クリアするために、皆さんも試行錯誤してみてください。

fig02_200409.png図:「Minecraft:主人公の旅」これもブロックを組み合わせることでプログラミング的思考を学ぶというもの
Minecraft | Code.org

次は「マインクラフト」です。マインクラフトといえば子どもたちに人気のゲーム。しかしこれはコードを書いてマインクラフトの世界を冒険するというものです。遊び方は簡単、先ほどのようにパネルを配置して、指示通りの行動をエージェントに送り、操作するというものです。マインクラフトそのものにも「Education Edition」があり、佐野日大中等教育学校の安藤昇先生が"ユーチューバー"として教育版マインクラフトを紹介する動画があります。これを見ると、ゲームも教育もあまり変わらないように見えるかもしれませんね。

プログラミング【マインクラフトサバイバル生活】1日目

Eテレで家族一緒に「テキシコー」

そして親子で楽しんでもらいたい、大変有用なコンテンツがあります。2019年12月末に放送されたEテレ「テキシコー」です。

fig03_200409.png図:Eテレ「テキシコー」。現在は第2話まで放送されています

テキシコー [総合 小学校3・4・5・6年生、中・高]|NHK for School

この番組は、Eテレで人気の「ピタゴラスイッチ」「0655/2355」などを手掛けたユーフラテスが制作した、まさにプログラミング的思考を学ぶたった10分の番組です。たった10分ですが、おそらく日々プログラミング的思考を行っているエンジニアの皆さまが見たら、簡潔に要点をまとめたスタイルに驚くのではないかと思います。

この番組ではプログラミング的思考を「分解」「組み合わせ」「一般化」「抽象化」「シミュレーション」に分け、

・小さく分けて考える
・手順の組み合わせを考える
・パターンを見つける
・大事なものだけ抜き出して考える
・頭の中の手順をたどる

ことこそが、"テキシコー"であるとしています。このように説明されると、いったい何を学ばせようとしているのか、大人もすんなりと理解できるのではないでしょうか。EテレのWebサイトで現在放送されている第2話までが全編配信されていますので、ぜひチェックしてみてください。

この他にもEテレでは、プログラミングに関する番組を制作しています。このあたりの取り組みを見ると、さすがNHKとうなるばかり。こちらもぜひ、家族みんなで楽しんでみてください。

みんなとやれば もっと楽しい ワイワイプログラミング | NHK for School


JavaやC++をいきなり学ぶことは難しい----その前の準備運動を!

そもそも、2020年からの「小学校プログラミング教育の必修化」といっても、いわゆるプログラミング言語そのものを学ぶわけではありません。世の中にある教育ガイド本はいきなり言語を学ぶようなものも少なくありませんが、まずは基礎となる「プログラミング的な考え方」を学ばなければ、一体何のために構文を学んでいるか分からなくなるはずです。

また、親や先生たちがプログラミング的思考を理解していないのに、子どもたちだけが学ぶことも難しいでしょう。おそらく親世代はこれまでプログラミング的思考など習ったことがないはずです。そうなるとまず、私たち自身が子どもたちよりも先回りして、ある程度の知識と理解が必要です。

とはいえ、いまでは無料で大変良質な教本が、オンラインで利用できるようになっています。そのため、まずはこれらを一通り子どもたちと触ってみて、一緒に考えてみてはいかがでしょうか。上記で紹介したものは、いわれなければ「ゲーム」のようなもの。堅苦しいものは一つもありません。

ご家族は「お子さま端末」の管理もお忘れなく

そして重要なのは、上記のようなコンテンツを楽しむ/学ぶためには、しっかりと管理された端末を子どもたちに渡し、ある程度自由にやってもらうことかもしれません。ガッチガチに制限された端末よりは、ある程度の自由を許し、かつしっかりと家族に守られた状態が望ましいでしょう。この時、登録された端末を、ネットワーク側でコントロールするという方法は便利かもしれません。できれば"監視"にとどめ、遠くから見守るくらいにしておき、興味を阻害しないようにしたいところです。


多くの子どもたちがこういった教材を楽しみ、プログラミング的思考が生きていく上のツールとして使いこなせるようになることを期待しています。ついででかまいませんので、ITセキュリティ的な教本もぜひ、家族ご一緒に学んでみてださいね。


執筆者

宮田 健(みやた たけし)
国内大手SI事業者、および外資系大手サポートにてエンジニア経験を積み、2006年にITに関する記者、編集者に転身。その後はアイティメディアのエンジニア向けメディア「@IT」編集者として、エンタープライズ系セキュリティに関連する情報を追いかける。 2012年よりフリーランスとして活動を開始し、"普通の人"にもセキュリティに興味を持ってもらえるよう、日々模索を続けている。
個人としては"広義のディズニー"を取り上げるWebサイト「dpost.jp」を運営中。公私混同をモットーにITとエンターテイメントの両方を追いかけている。 著書に「Q&Aで考えるセキュリティ入門「木曜日のフルット」と学ぼう!」(MdN)、「デジタルの作法 1億総スマホ時代のセキュリティ講座」(KADOKAWA/中経出版)がある。