Vol.7 スマホルールの作り方(その4)中高生編親子で会話したくなる「ネット・スマホとの安全な付き合い方」
今回は、中高生のスマホルール設定について考えてみましょう。
最初に、ここまでのおさらいとして、スマホを渡す前提条件を再確認!【1】スマホは親の所有物
【2】利用目的をはっきりさせる
【3】ルールの設定と運用は根気良く厳密に
さて、中高生の世代は、思春期、第二反抗期、などいろいろな言われ方をします。親の言うことがうるさく感じ、ことごとく反発したくなる多感な時期です。指示や指摘をされることを嫌い、親に言わない秘密、欲求、夢などもたくさん出て来ます。親の言う事に素直に従うのはせいぜい中1まででしょう。
そんなムズカシイ年代とスマホの組み合わせが、中高生のスマホトラブルを複雑にしています。
この年代のお子さんとは、利用ルール決めをする際によく話し合ってもらいたいことがあります。
それは、
ネットのルール・マナー=社会のルール・マナー
ネットと社会のルール・マナーに違いはない
皆さんが、これまで社会に適応して生きていくために身につけてきた知恵や行動習慣って、どんなものがありますか?それが社会のルール(行動規範)なわけです。
中高生の保護者の皆さんの世代(30代後半以上)では、それを習得するのに社会人1-2年目ぐらいまでの十分な時間があったのではないでしょうか?失敗しても、それを正してやり直しすることができ、周囲もそれを許容することが普通でした。
ところが、子どもたちがスマホを大人と同じ環境で使い始めると、大人の社会までの距離が一気に縮まります。簡単に言うと社会のルールや危険を避ける力を身につけていない子どもが、新宿の歓楽街に出入りをするようなものです。
社会のルールやマナーってどんなこと?
社会のルール・マナーといっても漠然としていて伝えにくいと思います。
逆に「世の中で生きていけなくなる」社会に適応できなくなる行動を考えてみると、わかりやすくなります。
- 相手の気持ちを考えず、思ったことを全部言ってしまう
- 謝らない、反省しない、敬意や感謝の意を伝えない
- 暴言を吐く、他人の考えや行動を批判し文句を言う
- 自分の価値観を押し付ける、脅したり従わせたりしようとする
- 自分の利益のために、騙したり損害を与えたりする
- 他人の秘密を探る、暴露する
- 身分を隠して嘘やデマを流す
- 法律に違反することをやる
- 契約や約束事を守らない
さあ、こんな人とお付き合いしたいでしょうか?お子さんにぜひ聞いてみてください。
そして、世の中には、このような行動をする人がゴマンと居ます。
そのような人々と簡単につながるのもインターネットです。
インターネットは特別で現実とは別世界だと思ってしまいがちなのは、スマホやパソコンの画面を通してしまうからで、画面の先には、現実の人間が居ます。社会のルールやマナーには、ネットもリアルも違いはなく、まったく同じなのです。
ネットとスマホのルール設定を通じて、成長する機会に
中高生は、徐々に世の中の仕組みやルールを知って、自立心、自尊心を育み、社会での自立できる準備をしていく時期です。
また、大人への準備として、この時期にネット特有のコミュニケーションツールやその特性、起きやすいトラブルなどについてひと通り経験し、「失敗体験」を通じて成長していく必要もあります。
よく、危ないものからは遠ざける、使わせないという意見を聞きますが、果たしてそれが良いことなのでしょうか?法律や契約、金銭的な責任が伴わず、行動範囲も限られている時代に、小さな失敗、試行錯誤の機会を与えることが、体験に基づいた生きた知恵を身につけることにつながると思うのです。
中高生の世代は世の中の流行や事件ニュース、他人との関係性に大きな関心を持ち始める時期です。この世代では、以下のようなことができるようになるのが目標だと思います。
<成長目標>
- ネット・スマホを利用する場所や時間を自分でコントロールできるようになる
- 良識的で誤解を受けない内容で、他人とのメッセージのやり取りができる
- 他人のプライバシーに配慮する
- ネットの情報を鵜呑みにせず、嘘やデマを他人に広めない
- 自分が犯してはいけない違法行為について知る
- 自分が遭遇する可能性のある悪徳行為や犯罪行為について知る
- 法律や契約についての知識
成長目標に沿って、利用状況をウォッチするのが保護者の役目です。
⑤⑥などは、専門的な知識が必要なので、セミナーや講習の受講、書籍を読ませるなどの方法もあるかと思います。⑦は高校生になってからでも良いかも知れませんね。
中高生向けのルール設定のポイントとは「自主性」と「見直し」
中学生になると、行動や発言がイッチョマエになってきます。特に2学期になると環境にも慣れ、友だち付き合いや行動範囲が目に見えて変わっていくと思います。自分で考えて行動したくなり、親のお小言にはなかなか従わなくなってきますね!
ルール設定のポイントは「自主性」と成長に応じた「ルールの見直し」です。
スマホは子どもにとって、どんな物より手に入れたい魅力的なツールです。それを手に入れるためには、少々の不便があっても、ルール設定の話しに耳を傾けようとします。自分が考えたルールを言語化し紙に書き出すことで責任の所在がはっきりし、その意識が刷り込まれ習慣化の手助けになります。また、この時期に「親と話し合って約束をし、権利を獲得していく」という習慣ができることは人間としての成長につながりますし、親子対話の機会も増えるのではないかと思います。
具体的なルール設定項目(中高生偏)
- スマホやネット利用の危険性、違法行為などについて学習する
- スマホを紛失しない、壊さない
- 利用は22時まで、寝るときは自分の部屋に持ち込まない、充電はリビングルーム
- 家族との食事や会話中はスマホを触らない、歩きスマホはしない
- スマホゲームは常時3つまで、追加は保護者の許可を得る
- SNSはLINEだけ。保護者と学校の友人までつながり許可(Twitterは安全に使えるようになってから許可)
- ネットでケンカや言い争いはしない、他人の争いや炎上に加担しない
- 自分や友人の本名、住所、電話番号、学校名など個人情報は書き込まない
- 他人の写真を許可無く撮影しない、投稿しない
- 毎週1回、スマホの利用状況チェックを受け、トラブルや困ったことがあった場合、小さなことでも親に相談する
- スマホを他人に貸さない、使わせない
- 簡単なパスワード設定、使い回しはしない
- ネットだけの知り合いには会いに行かない(親の許可を取る)
- ネットショッピングやオークション、フリマアプリでの売買はしない
小学生に比べて、範囲が若干広くなってきますが、これらを参考に10項目ぐらいをピックアップしてみましょう。子どもとの話し合いの中で、優先事項を考えさせ、自主的に決めさせていくのが大切です。利用スキルの向上によっては、違法行為以外は禁止事項を段階的に減らしていってもよいと思います。(スキルの判断の仕方は、次回の記事で触れたいと思います)
禁止事項の設定とペナルティ
放任すると危険なことや、違法な行為は禁止しておきましょう。
<禁止事項の例>
- 有料のサービス契約、高額な買い物
- 違法なコンテンツ(マンガ、動画)の閲覧
- 有害なサイト(犯罪、危険薬物、暴力、グロテスクなど)
- 18禁のサイトやサービスの利用
- 裸や下着姿の写真を撮影する、送信する
※お子さんのスマホにはフィルタリングは必ず設定しておきましょう。
ペナルティの例
ルールに違反した場合には、有無を言わさずペナルティを実行します。
一般的に「一定の期間使用禁止」というのが多いようです。このとき子どもが感情的になって衝突しても、自分から反省して折れて来るまで辛抱することが、うまくルールを運用するコツです。
<ペナルティの例>
- 制限を解いたものを元に戻す(利用時間、アプリの数、データ(ギガ)容量を減らす)
- 2週間スマホ没収
- 1ヶ月間スマホ没収
- 無期限スマホ没収
どこまで厳密にやるの?
ルール設定や見直しを、知識レベル、リテラシーレベルに応じてできれば理想ですが、どこまで細やかにやるかどうかは、ご家庭の方針次第です。
最初に書いたとおりルール作りは、お子さんが社会のルール、マナーを習得していくためのものです。
世の中では、厳密に管理されていない中学生、高校生の方が大多数ですし、小さなトラブルを起こしながらも、彼らなりに調らべたり、友人に相談たりしながら使い方の学習をしています。ルールが形骸化して、意味の無いブラック校則のようになってしまわないようご注意ください。
ルール設定の意義は、親子コミュニケーションを継続することにあります。
制約による不便さを通じて、お子さんからいろんな要望がでてくるでしょう。その際に、何をしたいか?その目的は何か?どんな場面で、どんな問題があるか?など具体的に言葉で説明してもらうのがいいでしょう。親としては要望に対してどんな懸念点があるかを伝えます。その懸念点をどうやって払拭してくれるかも、子供に説明してもらいましょう。
「友だちがみんな使っているからいいでしょ!」 などは、何の説明になってませんよね。説明できるまでは却下です。(論理的に説明する訓練)ここまで意識してやると、親と子供がお互いの考え方や関心、行動を知る良いきっかけになると考えます。
親子コミュニケーションがない、時間が取れない方にも
仕事に忙殺され、子供と会話する時間がどうしても取れない親御さん、スマホとルール設定をきっかけに対話をもってみてはどうでしょうか?スマホの利用きっかけに限らず、ケンカ、いじめ、自殺、強迫、性犯罪、お金のトラブルなど、人生を左右しかねない大事故は起きます。そのほとんどが、誰にも相談できず一人で悩んでいる子供です。
日常的に対話していると、お子さんの様子の変化に気づき、大事故になる前に対処できる可能性が高まります。
「重大なトラブルや事故に陥る前に、その兆候を把握する」
スマホの活用は、そのための有用なツールにもなり得ると思います。
そして、何気ない毎日のLINEのやり取りを少しずつする、アプリの使い方を子供に教えてもらう、ゲームを一緒にやってみる、そんなことが親子コミュニケーションを深めることもありますよ。
さて、今回は、非常に長くなってしまいました。
次回は、スマホルール連載の最終回、ルール運用、見直しの仕方について説明してみたいと思います。
BBSS オンラインセキュリティラボ
シニアエヴァンジェリスト 山本和輝